葛飾応為「吉原格子先之図」

初の太田記念美術館。

時間がうまく合いそうだったので、キュレーターの方のスライドトークに滑り込み。これを聞いてよかったです。

この展示には応為の絵は一点しかないときいて、「えっ」と思ったものの、よく聞いてみれば応為の絵と認定されているもの自体、極端に少ないそうです。今年は江戸東京博物館の浮世絵展、本展、あともういっこなんかで、一点ずつ応為の絵が観れて、これは大変な「当たり年」らしい。すごい希少性ですね。

そこでこの展示では悪く言えば場を持たせるために「浮世絵が捉える光と影」そして「透視図法」という隠れテーマを持たせているのですが、これが実によかったです。そもそも上記2つって西洋絵画と東洋絵画の違いの最大のポイントとして語られるものです。でも、応為が描く吉原の店先の闇の深さや、透視図法を積極的に採用した浮世絵を見ているとこのような単純な二分法で考えてきたことが恥ずかしくなるくらい、その境目はブラーなことがよくわかります。

それでもやはりデカルトの牛の目の実験やカメラオブスキュラに結実する「絵画」とは光の反射をサイエンティフィクに捉えることだ、という確固たる精神性というか思想というものが浮世絵の透視図法には欠如していて、それは技術や構図の稚拙さに現れています。でもこれも後期になると経験値というか、ボトムアップ的に洗練されてくるんですよね。

日本は海外のものを採り入れて自分のものにするのが得意とはよく言われることですが、これもその例の一つなのかもしれません。